豊かな自分を感じていたい

 寄り道ついでに、前々回「今日この頃」の感想に寄せられた、他のコメントについても考えておきましょう。

 ひまわりなつこさんのコメント

確かにそう思います。
「今日この頃です」味わい深い人格を錯覚させますネエ。

私が履歴書でみつけて嫌なもの。
「特になし」の「特に」
ろくに考えもしないで、特になんてつけないでほしい。
何かあるなら書いたほうがいい。ないなら 「なし」
そうほうが潔い。と、私は思います。

 確かに言葉を厳密に使おうとするなら、おっしゃる通りなのですが、書く方には、そうはいかない事情があるのですね。

 たとえば、「何が趣味ですか」と聞かれて、「読書とかです」と答えるわけです。「読書です」と答えずに。
 これは、「読書です」と言い切ってしまうほど、「読書が趣味である」と自信を持っていえないことももちろんあるのですが、それ以上に問題なのが、「読書を数あるうちの一つ」として答えようとしているということです。
 もちろん、「それでは他には何があるのですか」と問われれば、「うっ」とつまるわけで、そう答えた人が、その他のものを本当に持っているわけではありません。しかし、このような、「とか」を単独で使おうとする人の意識の深層にあるのは、「自分にはたくさんの表現できない深いところがたくさんある」と思いたい意識なわけです。「そのたくさんある中で、代表的なものを一つ取り出しているよ」と相手に思わせようとし、自分もそう信じ込んでいるのが、この表現です。(https://www.syouron.com/nekoron/?page_id=78
 ですから、そう答えようとする者の意識を、根本から改革しない限り、そう簡単に、この表現をやめさせることはできません。

 それと同じことが、おそらく、例に挙げられた「特になし」でもいえるのだと思います。「色々あるけれど、それと表現できるほど立派なものはない」という自己弁護の気持ちが働いているのです。
 もし、「読書」などと答えてしまうと、「何を読みますか」「どんな内容でしたか」とつっこまれるのも嫌ですし、「なし」と答えれば、本当に何もない薄っぺらな人間になってしまいますから。

 ちなみにいうと、就職・進学の面接や、作文なら、「〜とか、〜とか」というように、並列で使われるものではない、単独で使われる「とか」は、使うべきではないと言われています。私がこだわっているような深い意識の問題からではなくて、「これは口語表現だ」という認識からだと思います。

 また、自己アピールの場である、履歴書で、「特になし」はいけません。
 資格欄などは、「特になし」でも、本当に何もなければ、私などはそれほど気にはなりません。小学校の頃の、毛筆1級なんてものを書いても仕方がありませんから。
 でも、できれば、普通自動車免許証でも何でも、何か書けるのなら、書けるだけ書いた方がよいでしょう。
 また、資格欄には書けなくても、「趣味・特技」としては、「毛筆」と書けばよいわけです。

 履歴書に書くことというのは、面接の際に、「ここでもう少しつっこんでくれよ」とこちらから、つっこみどころを逆に指定できる貴重な場です。ですから、それをうまく利用して、面接を有利に進めない手はありません。
 その代わり、書いた項目については、つっこまれてもしっかりと対応できるだけの事前準備は、しっかりとしておかなければなりません。

コメント

  1. こうのすけ より:

    沢尻エリカが「特にありません」といって問題になりましたが
    あのときの「特にありません」は「自分にはたくさんの表現できない深いところがたくさんあると思いたい意識」というよりもお前うるせえ黙れ、私も何も言いたくない、という感じが伝わりました。場面や状況によって言葉のもつイメージが変わるのが面白いですね。

  2. ひまわりなつこ より:

    あの「特にありません」はよかったです。
    世間からは反発をかっていましたが。
    私が添削をしている企業の添削指導では
    「特になし」は、赤ペンものです。たくさん趣味を書く人も赤ペン。
    一つか二つに絞って、趣味へのこだわりをかいて と添削します。
    自分らしさをいかに表現するか。
    面接時に採用担当者が質問したくなるような書き方ができたら、
    しめたものということでしょうか。

  3. Neko Fumio より:

    こうのすけさん
     沢尻エリカが、映画の初日舞台挨拶の時、司会から一番思い入れのあるシーンを問われて、「特にないです」と答えたようですね。
     この「特にないです」は、何か聞かれてふてくされて答える、「べっつにー」という返答と同じですね。
     この後、行定監督がフォローするかのように、撮影フィルムのロール数が300を数えたときに、沢尻が徹夜でクッキーを焼いてきたというほのぼのエピソードを明かした時にも、「どんな思いで焼いたんですか?」と質問されて「別に…」と不機嫌そうに答えたという、それと同じ意味。
     言葉ですからね、それが発せられる状況によって、当然持たせられる意味も違ってきます。
     私がこだわりたいのは、言葉を発しようとしたとき、無意識の内に込めようとしている、このような意味を、もう一度吟味して、自分の使う言葉に厳しくなろうということです。
    ひまわりなつこさん
    >「特になし」は、赤ペンものです。たくさん趣味を書く人も赤ペン。
    >一つか二つに絞って、趣味へのこだわりをかいて と添削します。
     なるほどね、面接などで、しゃべりすぎるのも、「アウト」といわれているのと同じ理屈ですか。
     その人なりの人柄のよさが多少なりとも出るようにしろということですね。

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